東京地方裁判所 昭和41年(ワ)4245号・昭41年(ワ)11642号 判決
〔抄録〕
(2) 被害者の逸失利益について。
(イ) 原告本人の供述によると、被害者直宏は死亡当時満四才一ケ月で、生来甚だ健康であつたと認められるから、本件事故がなければ同年令者の平均余命である六五・三七年(第一五回日本統計年鑑参照)まで生存しえたと考えられるので、その間得べかりし収入を案ずるのに、満二〇才から就業し少なくとも満五五才までの三五年間は毎月収入を得たものとし、月収としては昭和三八年全産業常用労働者の男子一人当り一ケ月平均給与額三万八八〇〇円(右年鑑参照)を採用し、控除すべき生活費を五割とすると、月々純益は一万九四〇〇円となり、一ケ年では二三万二八〇〇円となる。そこで、中間利息控除につきホフマン式(年別複式)計算法を使用して満四才当時の現価を求めると、
232,800円×(24.98363?11.53639)=3,130,517円
となる。すなわち三一三万円(以下略)が直宏死亡における逸失利益金の現価である。
(ロ) この場合の計算方法につき、初任給平均額から始めて昇給平均額を折り込み、生活費も収入増に伴い変動させ計算すべきものと勤める最高裁判所の判決(昭和三九年六月二四日民集一八巻五号八七五頁)が存することは当裁判所に顕著であるけれども、元来幼児死亡の場合の逸失利益なるものは、どのような計算方法をとるも確実な心証の下に認定しうる可能性あるものでなく、要するに死者の生命喪失という損害の評価算定の一方法というに過ぎぬものとして、ある程度の蓋然性・合理性・合目的性ある計算方法で満足するほかないのであり、ある特定の計算方法以外の方法を当然排斥しうるものではない。従つて、右判例にかかわらず、前示の如き計算方法をしても差支えないと考える。
(倉田卓次)